きょうはその東風子の失策物語を御報道に及ぼうと思って忙しいところをわざわざ来たんだよまたそんな仰山な事を云う、君は全体不埒な男だハハハハハ不埒と云わんよりむしろ無埒の方だろう。 君は十年前と容子が少しも変っていないからえらいと鈴木君は柳に受けて、胡麻化そうとする。 線が八本並んでもあとの句が出来ないと見えて、今度は筆を捨てて髭を捻って見る。 実際これは爺が長州征伐の時に用いたのですと寒月君は真面目である。 えらいと褒めるなら、もう少し博学なところを御目にかけるがね。 実はその洗髪を乾かすために唐縮緬の布団と針箱を椽側へ出して、恭しく主人に尻を向けたのである。 その紐の色は、ちと天保調だなと主人が寝ながら云う。 君その娘は寒月の所へ来たがってるのか。 すると迷亭はイヨー大分肥ったな、どれと無作法にも吾輩の襟髪を攫んで宙へ釣るす。 生徒や教師が少々愚図愚図言ったって何が恐ろしいものか、サントブーヴは古今独歩の評論家であるが巴里大学で講義をした時は非常に不評判で、彼は学生の攻撃に応ずるため外出の際必ず匕首を袖の下に持って防禦の具となした事がある。 それじゃ、訳を話して書籍費を削減させるさどうして、そんな言を云ったって、なかなか聞くものですか、この間などは貴様は学者の妻にも似合わん、毫も書籍の価値を解しておらん、昔し羅馬にこう云う話しがある。 主人の顔は渋い。 　悪口の交換では到底鼻子の敵でないと自覚した主人は、しばらく沈黙を守るのやむを得ざるに至らしめられていたが、ようやく思い付いたかあなたは寒月の方から御嬢さんに恋着したようにばかりおっしゃるが、私の聞いたんじゃ、少し違いますぜ、ねえ迷亭君と迷亭の救いを求める。 君も僕もその辺にぬかりはない当世の才子だが、そこへ行くと苦沙弥などは憐れなものだ。