迷亭はあの時分から法螺吹だったなと主人は羊羹を食い了って再び二人の話の中に割り込んで来る。 話せないとすれば土中にある金剛石の日を受けて光らぬと同じ事で、せっかくの智識も無用の長物となる。 陣笠に立葵の紋の付いたぶっ割き羽織でも着なくっちゃ納まりの付かない紐だ。 卒業して大学院へ這入って空間論と云う題目で研究していたが、あまり勉強し過ぎて腹膜炎で死んでしまった。 金田さんでも恐れねえかな、厄介な唐変木だ。 色気のない人じゃございませんか、何だって楊子を使わないんでしょう今度逢ったら注意しておきましょうと主人がくすくす笑う。 相変らず気楽な事を云ってるぜ。 して見ると可哀相なのは首縊りの力学を演説する先生ばかりとなる。 引き越す時に盗んで行きたかったくらいだ。 曾呂崎が電車へ乗ったら、乗るたんびに品川まで行ってしまうは、それよりやっぱり天然居士で沢庵石へ彫り付けられてる方が無事でいい 礼も非礼も相互の解釈次第でどうでもなる事だ。 吾輩でも奮発して、敵城へ乗り込んでその動静を偵察してやらなくては、あまり不公平である。 何とかいてあったんですなあに二三行ばかりですがね。 迷亭も馬鹿気た調子で僕は知らん、知っていりゃ君だとつまらんところで謙遜する。